続「海と山のオムレツ」を作って食べた話 シュティプラ編

投稿者: | 2025年7月3日

目次

はじめに

以前、紆余曲折の末に「海と山のオムレツ」を作って食べた話を公開したところ、ありがたいことに、それを読んでくれた友人が小説も読んでシュティプラに関する情報をくれた。今回は、前回食パンで適当に済ませていたシュティプラにこだわって、「海と山のオムレツ」に再挑戦するという内容である。もし、こちらのページに先に辿り着いた方がいれば、上記リンク先を先に読んでもらうと分かりやすいと思う。しかし、情報は発信するところに集まるって本当だったんだな。

カルミネ・アバーテのルーツ

『海と山のオムレツ』の著者カルミネ・アバーテは、オスマン帝政下のアルバニアからイタリアへ逃れたキリスト教徒によるアルバニア系住民の共同体「アルバレシュ」の出身である。アルバレシュでは、古アルバニア語に近いアルバレシュ語という言語が話され、独自の文化・習俗が保たれているらしい。1

つまり、以下の文章の「地元」を辿っていくとアルバニアになる可能性が高いのだ。

祖母が焼きたての柔らかなパン―地元で「シュティプラ」と呼ばれているパンだ―を半分に切って、オムレツを挟むのを見ているうちに、僕の口には生唾が湧いてくる。

そこに気づいた友人がアルバニアのパンを調べ、「Bukë shtëpie」というパンを見つけてくれた。私はずっと南イタリアのパンばかりを探していたが、アルバニアのパンを探すべきだったのだ。持つべきものは洞察力の優れた友である。

Google翻訳によると、アルバニア語で「Bukë」は「パン」、 「shtëpie」は「家」という意味で、「自家製パン」ということらしい。残念ながらアルバレシュ語への翻訳はサポートされていないので、「Bukë shtëpie」が「shtipura」に変化するという確証は得られなかった。そもそもアルバレシュ語は主に話し言葉らしく、地域によって発音が若干異なるため、明確な表記が定まっていない可能性もある。ただ自家製パンという名前からして、おばあちゃんが焼きたてでサンドウィッチを作るイメージと合うし、かなり確率は高いと思う。早速、教えてもらったアルバニア生まれのフードブロガーSonila Zarateさんのレシピで作ってみた。

Bukë shtëpieを焼く

シュティプラの材料

材料は強力粉、インスタントイースト、エクストラヴァージンオリーブオイル、バター、写真には無いけどぬるま湯、牛乳、砂糖、塩だ。オリーブオイルが入るところが地中海風だろうか。バターも材料にあるが、これは表面に塗る用。

最初に牛乳とぬるま湯とイーストを混ぜて、イースト液みたいな状態にしてから、少しずつ粉に混ぜていく。

詳細なレシピはSonila Zarateさんのblogを参照してもらいたいが、自分用の備忘録として私が作ったときの分量を記載しておく。全量だと多いので半分にして作った。

  • 強力粉 375g
  • ドライイースト 3.7g
  • ぬるま湯 200ml
  • 室温の牛乳 50ml
  • エクストラヴァージンオリーブオイル 15g
  • バター 12g
  • 砂糖 6.3g
  • 塩 9.3g

英語で書かれているので1cupはアメリカ基準の240mlに換算にした。そうすると本当はぬるま湯240mlと牛乳60mlになるのだが、少なくなっているのには理由がある。そのあたりは後述する。その他の材料も体積で書かれたものをこちらで重量に変換した際に誤差が出ているのと、勢いあまってちょっと多く入ったりしたものがあるので、参考程度でお願いしたい。

材料をこねてまとめた状態。

シュティプラの生地


一次発酵後。

一次発酵後


整形してバターを塗った天板に並べ、表面にもバターを塗る。

整形後


二次発酵後。

二次発酵後


オーブンに入れて200℃で25分。このときに水を張った耐熱皿を一緒に入れて、蒸気で満たしながら焼くのが特徴的だ。

焼き上がり


スライスしたところ。

スライスしたところ


海と山のオムレツの材料(今回は原著版)を混ぜて、

海と山のオムレツの材料


焼いて、

海と山のオムレツ


挟んだ。

サンドしたところ


断面はこんな感じだ。

断面


おいしい!前回よりもオムレツとパンが融合している。私は勘違いしていた。オイルが染みて境目がわからなくなるためにはパンは乾いている方がいいのかと思い、食パンを軽くトーストしたりしていたのだが、柔らかいパンの方がオムレツと食感が揃って一体感が出る。

個人的に食事と一緒に食べるパンにしてはちょっと塩気が強いので(いわゆる塩パンくらい)、今度焼くときは塩を若干減らそうかなと思うが、総じて大満足だ。

失敗編

さて先ほど思わせぶりに伏せた、水分量の話を書こう。実は上のBukë shtëpieは2回目である。1回目は盛大に失敗した。

これが最初に材料を混ぜたところである。ホットケーキの焼く前くらいのとろとろ具合。どうにかならないかと混ぜ続けていたので、発酵も進んで気泡ができている。

シュティプラの生地(失敗版)

言い訳すると、混ぜている途中で「これは水分多いぞ」と思ったのだが、水分側にイーストが入っているので減らすに減らせず全部入れてしまったのだ。

方向転換して小麦粉を足していき、何とか表面を一瞬手で持てるくらいの硬さにしたのが以下。しわしわだし、表面に小麦粉の膜を作ったような感じだ。ちなみにこの時点で強力粉の合計が402gになっている。水分300gなので水分の重量比は74.6%とまだ結構高め。(ただし、牛乳の固形分は無視できるものとする)

粉を足して何とかまとめた

その後発酵させて、ベタベタと格闘しながら何とか整形して、焼き時間も5分くらい延長してできたのがこれだ。

焼き上がり(失敗版)

中身はフォカッチャみたいな食感だったが、表面がカチカチで、焼き上がりもぺしゃんこだった。

スライスしたところ(失敗版)

どうしてこうなってしまったのか。考えられるのは以下の2点。

  1. ネット情報だけで強力粉のグラム換算をした
    • アメリカの軽量カップで小麦粉1カップは約120gという情報をネットで見て、2.5カップを300gと換算していた。実際に家にあった強力粉を計量カップで計ってみたら240mlで150gだったので、2.5カップで375gだった。これは結構な違いだ。
  2. 国産小麦粉と外国産小麦粉の吸水率の違いを考慮していなかった
    • 家に常備している強力粉は「春よ恋」なのだが、日本の小麦粉は外国産の小麦粉に比べて吸水率が低い傾向にあるらしい。調べてみると「外国産小麦粉のレシピに国産小麦粉を使う場合は水分量を減らすべし」という情報がわんさか出てくる。その減らし方も小麦粉の銘柄によって変わってくるようだ。そこで2回目に作るときはイースト入りの液は240mlくらいで作り、それを入れ終わったら水分だけをちょっとずつ足していくという方法をとった。

まとめ

今回初めてイタリアのアルバニア移民のことを調べたし、小麦粉の種類による水分量調整のことも知れて、いい勉強になった。ちなみに2回目に作ったときはほとんど苦労せずにまとまったが、レシピには「The dough is initially sticky and you need to work it with your hands into a more elastic shape and less sticky.」と書かれていて最初はベタベタするものを頑張ってまとめるらしいので、本来はもう少し水分量が多いのかもしれない。次に焼くときは、塩をちょっと減らして水分をちょっと増やしてみたい。

シュティプラ

  1. 栗原俊秀のホームページ カルミネ・アバーテ『偉大なる時のモザイク』訳者あとがき ↩︎


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